【1月の消費者物価指数プラスに・・・1年1か月ぶり】

2017年3月3日
読売新聞

総務省が3日発表した1月の全国消費者物価指数(2015年=100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く「総合」が99.6となり、前年同月比0.1%上昇した。
プラスに転じるのは1年1か月ぶりだ。

ユニオンからコメント

政府が2%を目標に掲げている消費者物価指数が、13カ月ぶりに上昇したというニュースです。

【ご参考】【2015年基準 消費者物価指数 全国 平成29年(2017年)1月分】総務省統計局

物価が上昇する最大の要因は、国内需要の高まりです。日本の景気が良くなると、物の需要が少しずつ高くなり、生産する企業は消費動向を読み、生産量を増加させていきます。物を作るには様々な原材料が必要になりますから、物の需要が高くなると、原材料の価格も上昇していきます。つまり、消費者が次々に商品を購入することで、企業側の販売価格に反映され、物価が上昇します。ところが、その消費は伸び悩んだままのようです。

【1月消費支出1.2%減・・・11か月連続マイナス】

総務省が3日発表した1月の家計調査(速報)は、1世帯(2人以上)あたりの消費支出が27万9249円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比1.2%減少した。(2017年3月3日 読売新聞)

【ご参考】【家計調査(二人以上の世帯)平成29年(2017年)1月分速報】総務省統計局

消費が伸びていないのに物価が上昇しているのは、原材料・コストの上昇や円安の影響が考えられます。欧米諸国も、自国の物価を安定させるために消費者物価上昇率を2%に設定しています。

【ユーロ圏の物価、前年比2.0%上昇 ECB目安上回る】

欧州連合(EU)統計局が2日発表したユーロ圏の2月の消費者物価上昇率(速報値)は、前年同月比2.0%だった。4年1カ月ぶりの高い伸び率で、欧州中央銀行(ECB)が物価安定の目安とする「2%弱」を上回った。ただ、エネルギーと加工していない食品を除くコア指数は0.9%で、3カ月連続で横ばい。ECBは一時的な上昇とみている。(2017年3月3日 朝日新聞)

【米3月利上げ、現実味 物価上昇率2%目前・慎重派が容認発言】

米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げの観測が急速に高まっている。米国の景気指標が堅調で、FRB高官による利上げ容認の発言が相次いでいるためだ。市場ではドル金利の上昇を見越して円安ドル高となり、日米の株価は上がっている。
FRBは昨年12月、1年ぶりに利上げし、今年の利上げペースの見通しを「年3回」とした。市場ではこれまで、次の利上げは6月との見方が多かったが、FRB高官の相次ぐ発言で、一気に「3月利上げ」が浮上してきた。
FRBが重視する物価上昇率は、1日に発表された1月の指標が年1.9%増となり、「年2%」の目標に近づいている。米利上げでドル金利が上がれば、日本銀行が金利を低く抑えている円との金利差が広がる。2日の東京外国為替市場ではドル買い円売りの動きが広がり、一時、1ドル=114円台前半と、約2週間ぶりの円安ドル高水準となった。(2017年3月3日朝日新聞)

多くの国が景気回復に向かって目標にしている物価上昇率2%ですが、達成した韓国で起きたニュースを見てみましょう。

【消費者物価急騰におののく韓国・・・政策目標達成も「庶民は死んじゃう」】

景気後退と物価上昇が同時に発生する「スタグフレーション」の危機に、韓国経済が見舞われている。韓国統計庁が2日発表した今年1月の消費者物価指数は前年同月比2.0%増の102.43と急激に上昇した。
物価上昇率が2%台となるのは2012年10月以来、4年3カ月ぶりの高い水準だ。生鮮食料品の値上がりを受け、消費者が気軽に楽しめる軽食分野が軒並み大きく値を上げ、消費者の財布を直撃。食品価格が高騰する一方で、韓国の消費者心理や企業の景気見通しは、過去のアジア通貨危機やリーマンショック時並みに冷え込んでいる。
こうした状況から、現代経済研究院は5日、韓国経済について「低成長・高物価基調に移行していく可能性がある。国内経済のスタグフレーション突入の恐れも排除できない」とする報告書をまとめた。
韓国銀行は中期の物価上昇率目標として2.0%を掲げている。このため、韓国のポータルサイト大手ネイバーの掲示板には、「祝!政策目標達成・・・おかげで、庶民は死んじゃうよ」と皮肉な書き込みがなされたほか、「給料もちょっと(物価に)合わせてあげてくれ」と切実な声もある。(2017年2月17日 産経新聞)

景気が回復しながら物価が上がるのではなく、原材料価格の上昇や円安・ドル高によって物価が上がるのは、いわゆる「悪いインフレ」と呼ばれます。経済活動の停滞(不況)と持続的な物価上昇が共存する「スタグフレーション」を引き起こしかねないからです。
韓国に限らず、給料などの収入が伸び悩むなかで、物価が上昇してしまうと、実質的な所得を減少させ購買力を低下させてしまいます。消費者が出費を抑えようと考えることで、景気を後退させてしまいかねません。

【日銀緩和、2審議委員批判 「物価2%に固執」「市場の機能損ねる」】

大規模な金融緩和を行う日本銀行で、政策決定に異論を唱えてきた審議委員2人が最近、相次いで現在の政策を批判した。ともに大量の国債を買い、長期金利を「ゼロ%程度」に抑える政策の問題点を指摘する。「(日銀が目標に掲げる)消費者物価2%という表面的な数字にこだわるのは適当ではない」「前例のない大規模な金融緩和政策をソフトランディングさせることが今後非常に重要だ」。(2017年3月2日 朝日新聞)

物価上昇率だけにこだわるリスクを、日銀で審議委員を努める委員が指摘しました。目標を達成したおかげで国民生活をどん底に落とし苦しめてしまった、そんな「スタグフレーション」を引き起こさないためにも、あらゆる情報を排除せず、緻密な経済政策が打ち出されることに期待します。

出典元:読売新聞・総務省統計局・朝日新聞・産経新聞