【16年平均の完全失業率3.1%・・・6年連続改善】

2017年1月31日
読売新聞

総務省が31日午前に発表した労働力調査によると、2016年平均の完全失業率(速報値)は6年連続の改善となる前年比0.3ポイント減の3.1%だった。

完全失業者数(同)は208万人で、前年から14万人減少した。男女別では、男性が8万人減の126万人、女性が6万人減の82万人だった。

また、16年12月の完全失業率(季節調整値)は3.1%で前月と横ばいだった。完全失業者数(同)は前月比4万人増の209万人。内訳は「非自発的な離職」が55万人で、前月から5万人増加した。

ユニオンからコメント

完全失業率が6年連続で改善、完全失業者は208万人となり7年連続で減少したというニュースです。公表された資料の内訳を見てみると、15~24歳の完全失業率は5.1%、25~34歳で4.3%になっています。また、「非自発的な離職=辞めたくないのに離職した人」は55万人に増えました。

【ご参考】【労働力調査(基本集計)平成28年(2016年)平均(速報)結果】総務省統計局

「同一労働同一賃金を実現する」ための働き方改革実現会議では、「正社員の60%程度である現在の日本の非正規労働者の賃金を、ヨーロッパ並みの80%程度にまで引き上げる」ことを目標にしています。目標とするヨーロッパの失業率がどの程度なのか見てみましょう。

【ユーロ圏失業率、16年11月は横ばいの9.8%】

欧州連合(EU)統計局が9日発表した2016年11月のユーロ圏(19カ国ベース)の失業率は9.8%となった。7年3カ月ぶりの低水準を記録した10月から横ばい。内需中心の緩やかな景気回復を背景に、雇用情勢は底堅さを保っている。13年には一時12%台に達していたが、最悪期を脱しつつある。
11月の失業率を国別にみると、ユーロ圏19カ国で最も低いのはドイツの4.1%。一方、16年9月分が最新のデータであるギリシャの失業率は23.1%と高止まりしており、域内格差が目立つ。スペインやギリシャでは25歳未満の失業率がなお40%を超すなど、若年層の失業問題も深刻な状態が続いている。(2017年1月9日 日本経済新聞)

日本と比べると、各国とも失業率が高い印象を受けます。EU諸国では、「移民が仕事を奪っている」と言われることがありますが、「介護などのきつい仕事を若者はやりたがらない。移民なしに経済は成り立たない」という意見もあります。社会学者の小熊英二・慶應義塾大学教授が朝日新聞に寄稿した論説から一節を紹介します。

【脱ポピュリズム「昭和の社会」と決別を】

―私の目を引いたのは、現地の女性が発したという以下の言葉だった。「彼ら移民は最低賃金の時給7ポンド弱(約960円)で休日も働き残業もいとわない。英国人にはもうこんなことはできないでしょ?」
―私はこれを読んで、こう思った。それなら、日本に移民は必要ないだろう。最低賃金以下で休日出勤も残業もいとわない日本人が、大勢いるのだから。
―西欧で移民が働いている職場は、飲食や建設などだ。これらは日本では、非正規労働者が多い職場である。西欧では移民が担っている低賃金の職を、日本では非正規や中小企業の労働者が担っているのだ。(2016年12月22日 朝日新聞)

この一節から、日本の非正規労働者が低賃金である理由の一端を垣間見ることができます。
欧州より日本の正規・非正規の賃金格差が大きくなってしまう要因の一つとして、欧州では移民などの外国人労働者が担っている仕事を、日本は非正規ではたらく人が担っていることが挙げられます。

同一労働同一賃金の実現と称して、賃金格差を欧州並みに少なくしようとすることは、欧州並みの高い失業率や外国人労働者の受け入れという現実とどう向き合うかが課題になります。もちろん欧州と日本では歴史・文化などの違いがありますから、一概に同じとは言えませんが、欧州並みを目指す以上、目を逸らしてはならない背景です。

日本ではたらく外国人労働者について、厚生労働省は「外国人労働者数は約108万人。届出義務化以来、過去最高を更新した」と公表しました。

【外国人労働者108万人 国内、初の大台超え 昨年10月】

日本で働く外国人の数が初めて100万人を超えたことが分かった。厚生労働省が27日、昨年10月末時点の外国人労働者数を公表した。製造業で働く技能実習生やサービス業で働く留学生の増加が目立ち、国内の人手不足を補う人材としての存在感が高まっている。
増加率が高いのが「資格外活動」「技能実習生」で、いずれも前年比約25%増だった。技能実習生は8割近くが製造業(63.7%)と建設業(13.0%)で働く。三井住友アセットマネジメントの渡辺誠シニアエコノミストは17年度から介護分野での外国人技能実習生の受け入れが始まることもあり、「人手不足を補う外国人は今後も増えるだろう」と話す。(2017年1月28日 朝日新聞)

【ご参考】【「外国人雇用状況」の届出状況まとめ】厚生労働省(PDF:3.48MB)

若者の失業率や外国人労働者の数・仕事内容だけを見ていくと、日本にも、欧州のような「同一労働同一賃金」への下地ができつつあるのかもしれません。これから本格化する働き方改革実現会議の場では、失業率が高くならないための政策や外国人研修制度の問題などが、総合的な議題として扱われることを期待します。

出典元:読売新聞・総務省統計局・日本経済新聞・朝日新聞・厚生労働省