【企業が3年間で54億円不正受給・・・4割戻らず】

2017年1月12日
毎日新聞

雇用安定のために厚生労働省が企業に支給している「雇用調整助成金」を悪用し、企業が2013~15年度の3年間で計約54億3000万円を不正受給していたことが、11日分かった。不正が発覚した場合は企業に返還を求める仕組みだが、約4割に当たる計約23億8500万円が戻ってきていないことも判明した。

厚労省は助成金の不正について定期的に集計しているが、未返還額の全体を調べたのは初めて。今後、原因を分析し、不正防止や返還請求の態勢強化につなげる考えだ。

雇用調整助成金は、業績が悪化した企業が従業員を休業させた場合の休業手当などを補助するため支給する。

ユニオンからコメント

「雇用調整助成金」制度が悪用され、不正受給された金額が54億円以上に上り、およそ24億円が返還されていないことがわかったというニュースです。

雇用調整助成金とは、雇用を維持するために従業員を休業させた会社に国から支給される助成金です。景気変動などの経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業・教育訓練等)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されます。

悪い言い方をすれば「経営が苦しい会社には補助金を出すので、社員をクビにしないで休ませてください」ということです。雇用を守るために国が一時的に給料を立て替えているかのような制度です。不正受給の主な手口は、休業させたと偽ったり、教育訓練をしたと申告しながら普通に働かせているなど様々です。

もちろん審査は各労働局で厳格に行われています。不正が発覚した場合には、返還を督促していますし、不正を認めなかったり調査に応じなかったりした場合には会社名を公表、手口が悪質であれば刑事告訴に及ぶこともあります。

ソーシャルハートフルユニオンには、「(休職していた人が)回復して復職を求めたのに、会社が応じてくれない」という内容の相談が驚くほど多く寄せられます。その中に、「経営が苦しいので、もうしばらく休んでいてほしい」と復職を拒んでおきながら会社は雇用調整助成金を受給していたというケースが実際にありました。

本来は「休業」として扱われるべきなのに「休職」扱いにされていた事例です。
例えば、職場でトラブルを起こしてしまった人が、上司から「しばらく休むように」と言われれば、それは休業もしくは自宅待機命令に該当する可能性があります。はたらく人も「休業」と「休職」の違いを知識として知っておくべきでしょう。

「休業」は会社の都合で休むこと、「休職」は従業員の都合で休むことです。
休業の場合、会社は給料の6割以上を休業補償として支払わなくてはなりません。一方、休職は、法律の規定がない会社が任意に定める制度で、休職期間中の給料支払の義務はありません。また、休職期間をどのくらいにするかも会社が自由に決めることが出来ます。

ただし、休職制度を設けている会社は、そのルールを就業規則に記載していなければなりません。休職中であっても労働契約は成立していますから、健康保険や厚生年金の会社負担分については支払責任があります。

問題になるのは、休職期間を過ぎても従業員がはたらけない状態である場合、会社は「長期休職を理由として正当に解雇することが出来る」という部分です。このときに双方の主張が食い違ってしまうことが多く、復職をめぐるトラブルが跡を絶ちません。

休職については、就業規則に記載されているルールを、はたらいている人もきちんと理解する必要があります。安易な休職は、必ずと言っていいほど復職でのトラブルにつながります。心身の不調や医師からのアドバイスなど、理由があって一定期間休職することを検討する場合、どのくらい休めるのか、復職するには何が必要か、就業規則を熟読してルールを確認することが重要です。

出典元:毎日新聞