【<GDP>景気、依然綱渡り・・・年2.2%増】

2016年11月14日
毎日新聞

2016年7~9月期の実質GDP成長率は、3四半期連続のプラスを維持したが、輸出増など外需頼みの構図となった。GDPの2本柱である個人消費と設備投資は、依然弱いまま。家計の節約志向や企業の慎重姿勢は変わらず、金融・財政政策の効果に限界が見える中、景気は綱渡りの状況が続いている。

今回のGDPについて、内閣府幹部は「消費の弱さは天候の影響で、基本は底堅い。所得・雇用環境は堅調で、企業の景況感も改善が期待される」と強調する。確かに、雇用は堅調で実質賃金はプラスとなっているが、社会保障費の負担増などを背景に、消費者の財布のひもが緩む気配はない。物価も下落が続き、デフレに逆戻りしかねないとの懸念も出始めている。年明け以降の円高進行で企業業績も頭打ちとなっており、今後の大幅な賃上げや投資拡大も望み薄だ。

プラス成長を支えた輸出も、スマートフォンの新製品発売など一時的な増加に支えられた面が強い。中国など新興国の景気減速が続いているほか、米大統領に就任するトランプ氏の経済政策も不透明で、海外経済の不安要素には事欠かない。

日銀の大規模緩和による円安効果が薄れる中、政府は経済対策を盛り込んだ政府の16年度第2次補正予算で景気下支えを図るが、効果は一時的に過ぎない。非正規雇用の待遇改善など「働き方改革」を進めて消費拡大などにつなげたい意向だが、実現しても効果が出るには時間がかかる。日本経済は予断を許さない状況が続きそうだ。

【ご参考】2016(平成28)年7~9月期四半期別GDP速報(1次速報値) 内閣府(PDF:476KB)

【ご参考】国民経済計算の次回基準改定及び2008SNAへの対応に向けた今後の予定等 内閣府(PDF:644KB)

ユニオンからコメント

内閣府が最新のGDP速報値を発表、成長率はかろうじてプラスだったものの「働き方改革」によって非正規雇用の給料が上がるなどしなければ、なかなか景気は良くならないのではないかと報じたニュースです。

GDP(国内総生産)とは、(国民経済計算)の中の一つの指標で、GDPの伸び率が経済成長率になります。「経済成長率が高い=景気が良い」と考えられますから、GDP成長率は景気の良し悪しに直結する数値といえます。
(国民経済計算)とは、経済を総合的に把握する統計のことで、一つの国の経済状況について(生産・消費・投資)などから体系的に記録するものです。

国民経済計算からは、生産・所得の分配や所得をどこから受け取りどこに消費したかなどを読み取ることができます。そして、この国民経済計算には国連が定めた国際的な基準があります。現在の基準は(93SNA)というもので、日本は2000年に国民経済計算を(93SNA)に基づく指標へと改定しました。

この国際基準が新たに(2008SNA)というものに改定されます。
日本は、2016年12月から新しい基準に対応して実施する予定です。それでは、この基準が変わるとどうなるのでしょう。内閣府が発表している資料(2008SNAへの対応に向けた今後の予定等)を見てみると、専門用語が多く、完璧に理解するのはなかなか困難です。加えて、GDPは内閣府が計算して速報値などを発表していますが、そもそも詳細な計算方法については公開されていません。

この基準変更で知っておくべき情報は二つあります。
一つ目は、新しい基準で計算すると、GDPは、現在の471.6兆円から491.4兆円(※暫定値)に増加することです。これだけでGDPが4.2%の伸び率になってしまいます。

二つ目が、役員の賞与についてです。これまで「財産所得の配当」とされていたものが、「賃金」に項目変更されます。「役員報酬が10億円を超える人が5人いた」など、会社役員の高額報酬についてはたびたびニュースになります。今後のGDP計算方法では、これが賃金として計算されるのですから、「GDPの値では賃金が伸びている」になりかねません。

つまり、12月から計算方法が変わっただけなのに「GDPが増加して、国民の給料が増えた」になってしまう可能性があるということです。当然ですが、実際の景気があまり良くなっていないのに、経済を表す数値が良くなることに意味はありません。このような数字のトリックには注意する必要があります。

普通にはたらく人の給料が増えて消費が拡大しなければ、景気が良くならないことは明らかです。そして、景気が良くなるのか?給料が増えるのか?は、はたらく人すべての関心事でもあります。これから「働き方改革」がどのような方向に進んでいくのかは、誰もが関心を持って注目していかなければならないニュースです。

出典元:毎日新聞・内閣府発表