【過労死の実態 初の白書】

2016年10月8日
朝日新聞

厚生労働省は7日、過労死の実態や防止策の実施状況などを報告する「過労死等防止対策白書」を初めてまとめた。2014年に施行された「過労死等防止対策推進法」が、過労死をとりまく状況の報告書を毎年つくるよう定めたことを受けて作成したもので、15年度の状況をまとめた。
白書は280ページで、過労死や過労自殺の現状や防止策、残業が発生する理由などを説明。1980年代後半から社会問題化し、91年に結成された「全国過労死を考える家族の会」の活動が同法の制定につながったことにも触れている。
15年度に過労死で労災認定された人は96人、過労自殺(未遂を含む)による労災認定は93人。過労死による労災認定は02年度に160人にのぼったが、14年ぶりに100人を割った。ただ、過労死・過労自殺(同)をあわせた認定件数は近年、200件前後で高止まりしている。

■過労死ラインの残業80時間超、企業の2割で

企業約1万社を対象に15年12月~16年1月に実施(回答は1743社)し、5月に公表した調査結果も白書に盛り込んだ。それによると、1カ月の残業が最も長かった正社員の残業時間が「過労死ライン」の80時間を超えた企業は22・7%。「情報通信業」「学術研究、専門・技術サービス業」では4割を超えた。
同法は、過労死の防止策を進める責任が国にあることを初めて明記。白書は「過労死の実態の解明には、業界を取り巻く環境や労働者側の状況など、多岐にわたる要因を分析する必要がある」と指摘し、労働者約2万人に対する長期間の追跡調査や、長時間労働と健康に関する研究を始める計画も盛り込んだ。追跡調査は幅広い業種の約2万人について、健康診断の結果と労働時間や仕事の負荷、睡眠時間、運動習慣、飲酒や喫煙の有無などを10年間にわたって調べ、どのような要因が過労死のリスクになるかを分析する。今年度中にも調査を始め、毎年の白書で経過を報告していく予定だ。10年1月~15年3月に労災認定された事案のデータベース化も進めており、過労死の原因分析につなげる方針だ。

【電通社員の自殺 労災認定】過労死―再発防げず

2016年10月8日
朝日新聞

広告大手の電通に勤務していた女性新入社員(当時24)が昨年末に自殺したのは、長時間の過重労働が原因だったとして労災が認められた。(労基署が認定した1カ月の時間外労働は約105時間)遺族と代理人弁護士が7日、会見して明らかにした。電通では1991年に入社2年目の男性社員が長時間労働が原因で自殺し、遺族が起こした裁判で最高裁が会社側の責任を認定。過労自殺で会社の責任を認める司法判断の流れをつくった。その電通で、若手社員の過労自殺が繰り返された。

【ご参考】「過労死等防止対策白書」を公表します(厚生労働省)

【ご参考】過労死等防止対策白書

ユニオンからコメント

過労死の実態を調べた「過労死等防止対策白書」を厚生労働省が初めてまとめて公表したというニュースです。同じ日に電通社員の自殺が労災認定されたとの会見も開かれました。

残業が80時間を超えると過労死の危険が高いとされていますが、これをどのようにイメージすればいいのでしょう。
大まかに説明すると、法律で定められた労働時間は1日8時間・1週間40時間(週休2日)までですから、1日あたり4時間の残業を1ヶ月続けるような働き方です。ほとんど休憩を取らないで9:00~21:00の時間で仕事をしていると残業が80時間を超えます。
もちろん、1カ月単位の残業時間だけでなく、休日のない連続出勤が数か月も続いたり、実際は仕事を自宅に持ち帰っていたりするケースでも注意が必要です。残業が80時間を越えていなくても、過労死と判断されるケースはあります。

過労死を防ぐには、自分自身で体調管理することが何より大切です。
自分がどのくらい働いているか(労働時間)を把握しながら、体調の変化(よく眠れない、会社に行こうとすると涙が出る)・身体が発するサインを見逃さないようにしてください。

「職場のみんなが仕事をしている。自分だけ残業を断るなんてできない」そんな生真面目な人ほど自分を追い込んで無理をしてしまいがちです。また、自殺を考えるまで追い込まれてしまうケースでは職場のパワハラが原因の場合も少なくありません。
自分一人では解決できそうにない問題や悩みを抱えてしまったときは、ソーシャルハートフルユニオンへ気軽に相談してください。

出典元:朝日新聞・厚生労働省発表