第3041号【第19回差別禁止・概要②】

"特性"の理解が肝要
「面倒臭さ」前提に対応を

虐待防止責任は使用者にも

大企業の元社長から「障害者はただでさえ周囲に迷惑をかけているのに、これ以上権利だなんだといったらますます迷惑だ」といわれたことがある。障害者別事例で解説したように、障害者と健常者の対立が生じると、解決までの過程は非常に「面倒臭い」。担当者が精神的に参って休職に追い込まれることもある。また、障害者を「気持ち悪い」と思っていはいけないと考え、気に病む人も多い。かかわるのが面倒臭いと思ったり、気持ち悪いと感じるのは、個人の資質や性格の問題で禁忌ではない。会社は、そう感じる人が自社内にいる可能性や、障害者が健常者と違うことを認めたうえで、職場の仲間としてどう接するか、指針を示しルールを作ることが、本当のダイバーシティに取り組む姿勢だと考える。

障害者虐待防止法は使用者に責任が及ぶため、理解と対応が求められる。とくに、同法の「心理的虐待」については、独自のガイドラインを策定したり、社員教育をしたりする必要がある。また、そのことを障害者と情報として共有することも重要かつ効果的だ。

書籍の鵜呑みは認識歪める

ある大手企業に勤務する障害者は、「この人は障害者だ」と職場内で詳細に説明され、社会人である前に障害者としてだけ扱われていると感じ、対立を起こした。

厚生労働省の「改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の提供の指針の在り方に関する研究会」の報告書で、全ての障害について「本人の承諾を得て他の人に障害の内容を伝える」としたものの、障害の内容を理解していなければ、かえって悪循環を招く。その人が”障害者”と知るのと、”どういう障害者”と知るのとは似て非なるもので、障害の特性を理解し共有することが肝要だ。一方で、障害者は採用時に自身の障害について解説書のようなものを作成し提出しているものの、そもそも業務上配慮できない内容であったり、所属の部署に情報が反映されていなかったりする場合も多い。

厚生労働省の指針では、障害に関する正しい知識の取得や理解を深めるよう要求している。そのためか、最近では「心の病が会社をつぶす」「障害者が周囲を疲弊させている」といった論調の書物などが増えていると感じる。しかし、障害者自体が重篤な事例や健常者を脅迫するような過剰な内容のものが多く、現実には非常に少ない。

紛争に至る場合、多くの障害者が短期の有期雇用である。失職の恐怖から取り乱し、不本意な行動で問題を起こすケースが多い。これからは、試用期間や社員教育を通じ、障害者雇用に取り組む姿勢をはっきりと伝えることが求められる。そのうえで、正社員への登用などについて、明確な規定を作って明示し、納得させる必要がある。「総合的な上司の判断」などの文言では、「嫌われているから不当に低い評価をされた」と感じる障害者が非常に多い。試験の点数など数値化できる明確な基準があると良い。

出典元:労働新聞 2015年11月23日