【「無期転換ルール」と有期雇用契約の更新について】

2016年12月2日
ソーシャルハートフルユニオン

「5年以上はたらいているパート契約の人が、正社員にしてほしいと申し込むと会社が断れない」というルール、【無期転換ルール】の適用時期が近づいてきました。

【無期転換ルール】とは、1年契約などの有期労働契約を繰り返し更新しながらはたらいている人(非正規雇用の人)が感じる「雇止めに対する不安」を解消する目的で、平成24年8月10日に労働契約法が改正され新たに作られたルールです。

正しくは「無期労働契約への転換」と言い、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるというルールです。有期労働契約の人であれば、(パート・アルバイト・契約社員・嘱託)など、呼ばれ方に関係なく対象になります。

このルールは、平成25年4月1日以後に開始した有期労働契約から対象になります。
つまり、もっとも早い人で、平成30年3月31日の契約更新の時に、会社に「正社員として契約したい」と申し込めることになります。ここから逆算すると、平成29年4月1日以降に1年間の雇用契約をした人(勤続4年以上)から該当しますから、いよいよ時期が迫ってきたといえます。

【ご参考】【有期契約労働者の円滑な無期転換のために】厚生労働省(PDF:6.8MB)

一方、会社に【無期転換ルール】を守らせるため、「雇止め法理」も労働契約法に条文として明記されています。「雇止め」とは、会社が更新しないことで契約満了になり、労働契約が終了することです。既に、「一定の場合」には雇止めを無効とするルール(雇止め法理)は確立していますが、改めて条文として明記されました。雇止めが無効ということは、(会社の雇止めが認められない=雇用契約が更新される)ということです。

(一定の場合)とは、「過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの」と、「労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの」を指します。

これは、「これまでずっと自動的に更新されてきた」「面談で上司から来年も頑張るようにと言われた」「更新の面談がなく、職場の全員が更新されている」など、誰がどう考えても更新されると思えるケースが該当します。

障害者雇用促進法は、民間企業に「常時雇用している労働者数」の一定の割合(※法定雇用率)に相当する人数以上の障害者を雇用するよう義務づけています。
※現在の法定雇用率は2.0%で、雇用率を達成していない企業は納付金を徴収されます。また、正当な理由がなく達成しなければ厚生労働省のホームページに会社名が公表されます。

本来、障害者であっても正社員として雇用すべきですが、実態は、有期雇用にしている会社が圧倒的多数です。これは、雇用率にカウントされる「常時雇用する労働者」の範囲に、「一定期間(雇用期間が6か月、1年など)の有期雇用契約で雇用され、その雇用期間が反復更新されることにより1年以上雇用されると見込まれる人」が含まれるからです。

何年も契約社員・パートという有期契約を繰り返しながらはたらいている障害者が、【無期転換ルール】に該当したとき、会社が応じたくない(正社員にしたくない)場合に問題が生じることが想定されます。
「パートでなら雇いたいが、正社員はいらない」というケースです。

そう考える会社では、それを見越して、早々に次回の契約を更新しない場合があります。
平成29年度に更新される契約から更新をしない会社です。
「5年ルールの期限直前で打ち切ると、あまりにも露骨でトラブルになるかもしれない」という理由のようですが、非正規ではたらく人の不安を解消するためのルールが、逆に更新しないことにつながるという皮肉な結果です。

ソーシャルハートフルユニオンに、「思い当たる理由がないのに突然契約を打ち切られた」「10年も問題なく務めてきたのに、次は更新しないと言われた」という相談が増えてきました。今後、「正社員になりたいと言われたら断れなくなるから」契約を更新しない会社が増えてしまう可能性は決して低くありません。

「このままだと正社員にしなくてはならないから」打ち切った契約満了は、「認められない雇止め」ですから、もちろん無効です。正当な理由がなければ(無効な雇止め=不当解雇)として扱われます。
ところが、(雇止めや不当解雇は)個人が会社と争うのはとても困難なので、そのまま押し切ろうと強行してくる会社も少なくありません。

これまでソーシャルハートフルユニオンは、雇止めや解雇について、多くの会社と話し合って解決してきました。その経験や戦術はノウハウとして蓄積されています。また、契約が満了する前に、会社に「ユニオンに加入した」と通知したことで、不当な雇止めを撤回させたり、未然に防げたりした実例も多数あります。
「自分の雇止めは無効ではないか」「会社の説明に納得できない」「次は更新されないのではないか不安だ」そんなときはソーシャルハートフルユニオンに気軽に相談してください。

出典元:厚生労働省発表